演劇と珈琲、本と酒。

演劇とか珈琲とか本とか酒とかについて綴られるはず。

マーティン・スコセッシ監督『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

破壊力に満ちた180分。ただただディカプリオの演技に圧倒される。

 

 感想

 原作があり、しかも実話だということに驚かされる。実在の、しかもまだ存命の人間の一代記。ジョーダン・ベルフォートという名前も本名で、現在54歳の彼はモチベ―ショナルスピーカーとして全米で講演中というのが、この映画のオチではないか。

 しかし何といっても、ディカプリオの演技がすごい。役者としての神髄が見られる。というのも、セックスやドラッグのシーンにて臆面もなく恥も外聞も捨てて、スクリーン上で醜態をさらけ出しているのだ。人間として、大切なものを賭した役作りに圧倒されてしまう。ある種、役を生きる、演じるうえでのすさまじい覚悟を感じる。

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 もともと「汚い英語がすぐに学べる」という勧めもあって観るに至ったのだが、その言葉は間違いではなかった。作中何度中指が立つことか。調べてみると、映画史上もっとも"fuck"という単語が出てくる作品らしい。(その数554回!)

 

 カイル・チャンドラー演じるデナムFBI捜査官は、この映画のもう一人の主人公だと私は思う。ジョーダン・ベルフォートと対をなす存在で、この映画に秩序をもたらしてくれる。しかしその生きざまを見ていると、この捜査官も実はジョーダンになりえたのではないかという想像もわいてくるのである。彼も実はウォール街の狼なんじゃないか? 立場は違えど、非常に似たものを感じる。

 

 ともかくも、素晴らしい映画。三時間は長かったけれど、要所要所でのジョーダンによるスピーチの長回しのカットが、まるで自分がそこにいるかのような感覚にさせる。映画館で観てみたい作品だった。