演劇と珈琲、本と酒。

演劇とか珈琲とか本とか酒とかについて綴られるはず。

NY観劇録③ BLUE MAN GROUP

五感の一つ一つを丁寧に破壊されてるような気分だった。

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昨日観に行ったブルーマングループのショーはクスリみたいな作用を僕に及ぼしている。

 

 

ASTOR PLACE THEATRE 

Blue Man Group will rock your world. Blow your mind. And unleash your spirit. It won’t call your mom on her birthday. Or will it? (Do you want it to?) Leave your expectations at the door and let three bald and blue men take you on a spectacular journey bursting with music, laughter and surprises. 

 

Everyone’s part of the action in Blue Man Group’s original home at New York City’s Astor Place Theatre. 35 million people of all ages, languages and cultures know what Blue Man Group is really about. Now it’s your turn.  

 

DARE TO LIVE IN FULL COLOR. 

https://www.blueman.com/new-york/about-show より引用)

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日本でも有名なブルーマン

本拠地はここ、ニューヨークのアスタープレースシアターだ。

劇場は意外と小さく、中野ザポケットと同じか少し大きいくらいだろう。

劇場の看板にはよく見ると英語のほかに日本語のコメントも載っていた。

 

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一言で言い表すならば、「酔狂」である。

彼らのやっているショーは、普通の倫理感覚では太刀打ちできない。おおよそ、やっていることすべてが行儀が悪く、不気味で、グロテスクだ。客席からは“Oh”なり“Ew”(気持ち悪い時に言う)といった叫び声がいたるところで聞こえる。

 

だけれども小さいとき、誰しも一度は、そういうことをしたいと思ったことがあるんじゃないか。

「食べ物を粗末にするな」「食べ物で遊ぶな」「物は大切にしろ」

ルーマンはこういう「~してはいけない」という言い方に真っ向から対抗している。だから清々しいし、童心をくすぐられる。

 

・離れた口めがけて食べ物を放る。

・口の中に入るだけマシュマロを詰め込み、それをいっぺんに吐き出す。

・客席を練り歩きながら勝手にお客さんのペットボトルをひったくる。

・その中の水を周りの人にかける。

・劇場内にところ狭しと設置されたトイレットペーパーが回転して、大量のトイレットペーパーが客席を埋め尽くす。

このショーはきっと、ふだんそういうことができないすべての人たちのためにある。

 

同時に彼らは、パフォーミングアーツにおける「約束」にも従わない。

客席の中から無作為に人を選んで、舞台にあげる。そのまま台本のないパフォーマンスをする。まさに、舞台と客席との間に垣根のない、ライブパフォーマンスだ。

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純粋に興奮した。

その興奮はライブの熱狂というよりも、むしろ酒などによってふわっと宙に浮く類の興奮だった。自分の感覚が観る前と観た後では明らかに変わってしまって、世界の見え方が異なっているような感覚だ。終わった後、地に足がついていないようだった。

 

 

ふと、演劇との関連について考える。

ロシアの演劇人メイエルホリドは、リアリズム演劇から脱却し「演劇性」を追求するためのキーワードとして次の5つを挙げている。

  1. ウスローブノスチ(演劇を成り立たせている様式性、条件性、非日常性、身体性と音楽性、約束事)の提示
  2. グロテスク(モンタージュ構成、異化、感情の非伝達)な表現
  3. ビオメハニカ(科学的な身体訓練法)によって鍛えられた俳優
  4. 仮面(人物像が個性的であると同時に典型化され、暗示的で象徴的である)的な人物
  5. 祝祭性(笑いによって日常の関係性が解体される)

(参考:http://tclosaka.blog.fc2.com/blog-entry-260.html

 

どうにも、ブルーマングループは、これらを意識的に実践しようとしてるように思えて仕方ない。そう考えれば、全身真っ青な理由とか、決して笑わない理由とかが、すっと腑に落ちるのだ。